住宅にはベランダやバルコニーがごく当たり前に設けられていますが、近年、使い方や有用性を考えると必要が無いと考えられる方が増えてきているようです。
『無いよりあった方が良いかな…』と思われる前に、もう一度自分達の住まい方を考えてみましょう。
ベランダやバルコニーはあっても利用しない?
ベランダやバルコニー等を設ける事は悪い事ではありませんが、これからの住宅事情では有用性を検討し、理解した上で配置した方が良いかもしれません。
例えば、よくあるリビングや居室の掃出し窓から出られる約2畳ほどのバルコニー等はどのように使われているでしょう。
一番の目的は洗濯物を干したりする場所に利用される方がほとんどだと思われます。又は採光や採風、外気に触れる為の空間として、観葉植物等を育てられることを楽しんでおられる方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら結局のところ、エアコンの室外機や給湯器が設置されたり、収納庫や一時的にゴミ等を置く為のサービスバルコニーとして使われていることが多いようです。
バルコニー等を部屋にしてしまう考え方
これまで一般的な戸建住宅には当たり前のように約2畳分ほどのバルコニー等が物干しや室外機置き場の為に設けてありましたが、近年では環境問題や生活スタイルの変化により、小さなベランダやバルコニーでは物干しすらすることがなく、不要だと思われる方が多くなってきているそうです。
例えば、以前にも書いたかもしれませんが、この季節になると黄砂や花粉で洗濯物を外に干すことが躊躇われます。
梅雨時には外に干せませんし、夏には突然のゲリラ雷雨も気になります。
(季節に関係なく昼夜突然雨が降る事もあります。)
これらの理由でバルコニー等を使わなくなると建物の経年劣化と共にいち早く汚れていく場所になり、汚れてくると掃除やメンテナンスも面倒に感じ、更に使われなくなってくるのです。
生活スタイルの変化で洗濯物の量や洗濯する時間の変化の為、室内干しが一般的になる今、小さなバルコニー等を設けるのなら建物内にその場所を設ければ良かったと気付かれるのです。
※テーブルや椅子が置けるような大きなバルコニーの場合は計画当初から目的が違うと思われるため例外です。
サンルーム・ランドリースペース・ユーティリティの検討
バルコニー等に変わる用途の呼び名はサンルーム、ランドリースペース、ユーティリティ、又はフリースペースなどと呼ばれる事もありますが、居室と違って“絶対に必要ではない用途の部屋”は建売住宅等では検討・提案されることはありません。
なぜなら、これらのスペースを設けるのなら居室(寝室やリビングなど)を少しでも広くして、建物外部にこれまでのようにバルコニー等を設けておいた方が簡単で、販売するのに都合が良いからです。
(見栄えも含めて…。)
陽当たりの良い簡易屋内スペース。庭に設置されているイメージが強いですが、屋内をインナーバルコニー風にデザインすることもあります。
リビングや居室の一部、又は続き間となっている場合が多く、風雨を防げる趣味室、居室等の拡張的な使い方になります。
洗濯をする為に特化した部屋になっており、乾燥機を設置したり、室内干しスペースを兼ねています。浴場や洗面脱衣場に隣接することにこだわらず、外干しが出来る庭やバルコニー等に面している場合も多いです。
※洗面脱衣場に洗濯機等を配置しない為、洗面器が複数設置出来たり、広く使えるメリットもありますが、脱いだ衣類などを簡単にランドリースペースに運べる動線の工夫が必要となります。
浴場に隣接する洗面脱衣場が広く計画されており、洗濯やある程度の室内干しに対応しています。
※一般的な住宅の洗面脱衣場は一坪(畳二畳分)に洗面化粧台と洗濯機が横並びに配置されていることが多いですが、この床面積が広く計画されているイメージとなります。
※浴場・洗面脱衣場・ユーティリティと纏まって配置されることがほとんどで、動線が短いのもメリットです。
※このユーティリティに外干し用のベランダ等が隣接されていると更に使い勝手も良くなります。
家族の誰もが利用できる空間として配置します。
用途としては趣味室や書斎のように居室に近い考えですが、家事室とすれば天候による洗濯物の一時避難場所、室内干しやアイロンがけ等が出来たり、洗濯物等の収納庫を設けることで使い勝手も良くなります。
※ランドリースペースと同様に目的に応じて配置と動線の工夫が必要となります。
洗濯物は外で干したいとおっしゃる方が多いのは分かっていますが、バルコニー等の大きさが問題で干せなかったり、一時的に洗濯物を取り込んだ時の為に室内スペースがあれば安心で助かります。

画像では広さが分かり難いですが3.4畳のサンルームになっており、右手の掃出し窓の外は4.4畳の大きめのバルコニーになっています。
ご家族全員の洗濯物や大きなシーツ等も簡単に干せる場所となっています。生活スタイルを考え計画時から室内干しを検討していたので、壁面の一部には吸湿素材も使われています。(通風や換気も万全です)
ご家族が自由に入れるようになっており、動線も考えられています。

HAS建築研究所では依頼主の生活スタイルを検討し、こういったスペースの提案もしていますが、とても喜んでいただけています。
バルコニー等の有無だけが問題ではありませんが、こういった検討も注文住宅ならではなので、間取りを考える前にぜひ一考していただきたいと思います。
サービスバルコニーと区別しよう
誤解の無いようにお伝えしますが、バルコニー等を設ける事が悪いのではありません。
小さくて使いづらい、もう少し大きい方が良かった、あまりベランダ等で物干しをする事が無いなど、使い勝手が悪かった等の為に後悔しているとおっしゃる方が意外に多いのです。
※バルコニー等で2~4畳分ほどあるなら、その分部屋にしておきたかったという意見もあるようです…。
敷地の大きさや間取り、設備上の問題で必然的にサービスバルコニーになってしまうことがあるのは分かります。
バルコニー等を設ける場合は出来るだけ目的や用途に合わせた大きさと配置にし、サービスバルコニーと区別することが大切です。
何の検討もしていないと安易に各ベランダに室外機が置かれ、上記のようにいずれ使わなくなると汚れていく場所となってしまいます。
住んでから気付くストレス
ベランダ等は日当たりの良い南側や前面道路側、リビングや寝室などの居室にあるのが望ましいという固定観念があります。
当然、私達も同じように考えてしまうのですが、洗濯物についてはリビングのベランダで干すのか、又は家人誰かの部屋にあるベランダで干すことになってしまいがちです。
これが意外に家族のストレスになってしまうのです。
(誰がいつどのベランダで洗濯物を干したり、取り込んだりするのかを想像するとよく分かると思います。)
例えば上の画像のようなサンルームやフリースペース(家事室)があり、その部屋だけでもベランダ等に接していれば、効率も良くなると思われるのです。(家族皆で手助けがし合えますね。)
お子さんが多い家庭、洗濯がお好きな方もいらっしゃいます。
共働きで数日分をまとめて洗濯されることもあるでしょう。
大量の洗濯物、一日に何度も洗濯機を使われる方からすると、仮に乾燥機を使っておられても小さなバルコニー等では利便性が良くないのです。
同じ予算を掛けられるのなら建売住宅などを購入せず、注文住宅で住まい方の合った納得の住まいを建てて欲しいと思います。
寝室や居室にベランダやバルコニーがあると、窓が大きくなり広く明るく感じるのは分かります。
これまでの感覚だと、各部屋にバルコニー等は小さくてもあった方が良いと思ってしまうものです。
間取りや生活スタイルによっては設けない勇気、バルコニー等の利用方法の再確認が大切だと思います。
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