リビング階段で後悔しない家づくりの考え方

リビング階段とはリビング(LDKを一部屋にした場合が多い)内に階段を配置する間取りの事で、これまで家族の気配が分かり易く、コミュニケーションも取り易いと好まれていた階段の配置の仕方です。
オープン階段とも言い、階段室を設けず居室内に配置されます。
そんなリビング階段ですが、住んでみると不評が多く、後悔されている方もたくさんいらっしゃるそうです。
住まいは20年、30年と住んでいくもの…。
家族の生活スタイルが変わるにしたがって、暮らし難くなっていくようです。

住んでみてから気付くリビング階段の悪い所

リビング階段には上記のような住まい方のメリットの他、間取りのメリットとして廊下や建具が無くせ動線を短く感じさせることも出来ます。
敷地や計画する建物の大きさによって、リビング階段にすることで空間を少しでも広く出来る(感じさせる)ということは周知の事実です。

では、なぜ不評が多く、後悔される方が多いのでしょう。

一般的に言われているのは音や臭い、気流の問題です。
これは吹抜けにも言われていることで、上手く工夫して配置しないと“家族の気配が分かって良い”どころではありません。
間取りによっては生活音は筒抜けですし、調理臭もすぐに建物内に拡がります。
夏には熱気が上階に、冬には冷気が階下に吹き降りてくるのです。

この他、以前からお話していますように、リビング階段にする事によって、リビング(又はダイニングやキッチン)を通らなければ洗面脱衣場や浴場等と行き来ができなくなる可能性が高くなります。

又、近年ではコロナの影響も要因の一つとなり、LDKと各階、各室とのオープンな間取りは(建物内の換気の仕方による問題の為)良くないのではと考えられることもありました。
もし購入しようとしている建売住宅の間取りがリビング階段になっているのなら、住まい方の優先順位(全体的な間取りの使い勝手とリビング階段のデメリット)を検討してからにしましょう。

欧米とは生活スタイルや習慣から違う

リビング階段の考え方は何十年も前からありますが、家族(特にお子様)の気配が分かって良いと言われるようになったのは、かなり後になってからだと思われます。
約30年ほど前には輸入(建材)住宅が流行り、欧米の生活スタイルが憧れの一つになったのもあるでしょう。
しかしながら、欧米とは元々生活スタイルが違っています。

欧米の生活スタイルはまず【個人】があって【家族】があります。
注意)家族観の話ではありません。
つまり、まず個人のプライバシーがあって、その次に家族があるのです。
これは、子供が生まれた時から個室が与えられ、よほどの事が無い限り夫婦とは別室で就寝することからも分かります。

反対に日本は【家族】があって【個人】があります。
家族が主体、家族一丸、家族で共有、誇りある国民(民族)性ですが、それでも現代の住まい方は変わり、知らない内にストレスに感じてしまっているのです。
個々の生活スタイルや思考の変化が、リビング階段が不評になった理由の一つだと考えられます。

欧米ではマスターベッドルームに専用の洗面所や浴場、便所があり、子供達や客人とも分けられていることもあります。
床面積に余裕があれば子供部屋にも専用の便所や浴場(シャワールーム等)があるほどです。
その事からも家に浴場が一ケ所しかないことが普通の日本の住まいとは考え方や習慣も違います。

おそらく現代の日本人はプライバシーを重視し、個々の生活スタイルを表に出すようになってきたのかもしれません。
だからと言って、欧米のように各居室に便所や浴場が設けられることは無いかもしれませんが、今後欧米のマスターベッドルーム的な考え方は一般的な住宅でも普及するかもしれませんね。

リビング階段を採用するのなら、まず家族【個人】の生活スタイルに対応するような家づくりの計画が大切です。
※そうしないとリビングを通らないと洗面所や浴場に行けないという悪循環の間取りになってしまうことがあるからです。

住まいにおける考え方の変化

【家族】…として先に考える日本人にとって、リビング階段は好まれてきた訳ですが、住まいは10年、20年と住んでいくものです。
例えば新築時に小さかったお子様も大きくなり【個人】に目覚め、プライバシーを欲するようになります。
それに伴ってオープンな家づくりが反対に息苦しくもなってくるのです。
それは親にとっても同じかもしれません。
家族間のコミュニケーションが取り易い間取りだからこそ、友人が呼びにくかったり、家族の来客が煩わしく感じたり…。
リビングでゆっくり寛ぎたいけれど出来なかったり、常に清掃を心掛けないといけないなど後悔されている方々はそう感じているそうです。

余談ですが、住宅メーカーのテレビCMはどうしていつも家族がテーマなのか…。
決まって若いご夫婦に小さなお子様二人が登場しますが、もちろんそれは家を購入される購買層がターゲットだからです。
建売住宅にしても同じで、出来るだけLDKが一つの大きな空間になっており、家族のコミュニケーションが取り易いというのは売り文句の一つとなっています。
(間仕切り壁や建具が少ないほど安く抑えられるから…とも言えます。)

しかし、子供達が思春期になり、さらに成長してもCMと同じような生活スタイルでいられるのでしょうか?
どんな住まいにするにしても10年、20年後を想像し考えておく必要があると思います。

リビング階段・オープン階段にする場合の注意点

私達も敷地の間口や形状の問題などにより、住まい手の(デメリットを理解してもらった上で)要望に応じてリビング階段にすることは今でもあります。
LDKが一室になった大きな空間、吹き抜け、オープン階段は今でも流行りのようで否定する訳ではありませんが、自分達の住まい方に合わなければ意味がありません。
住んでみた結果として少なからずデメリットはありますので、下記注意点を把握し、ご家族の価値観と生活スタイルに合わせて検討しましょう。

  1. 便所や洗面所、浴場への動線。
    何度も言いますがリビング階段では一番の注意点となります。
    リビング階段の配置により全体の間取りに影響を及ぼします。
  2. 音の問題。
    上下階の家族の気配が分かると言う事は、それだけ生活音も筒抜けです。
  3. 暖気、寒気の気流。
    オープンが基本のリビング階段等では、暖気は上階に昇り、寒気は上階から階下へ降りてきます。
    家自体が高断熱・高気密化していても気流は起こります。
  4. 生活臭(調理臭)の問題。
    間取りにもよりますが、臭いは上階に上がり易いです。

間取りに影響を及ぼす1以外は、必要に応じて建具等で階段室を仕切る工夫が出来れば解消されます。
※ストリップ(スケルトン)階段の場合は難しいですが…。
臭いに関しては給気や換気の工夫も必要でしょう。
音の問題は適所に吸音材を使ったり、隣接する居室の壁や扉の遮音性を少し高めておく事をお勧めします。

※下図はリビング階段にした時の動線が悪くなる例です。
動線の悪い間取り※どちらの図も木造三階建ての二階部分です。
下方にダイニングやリビングが続いているとします。

左図はキッチンの後ろに洗面所と浴場がある間取りです。
間口の狭い建売住宅でよく見る間取りで、一見キッチンと洗面所が近い為、動線が短く家事がし易いと思われがちですが、家族の動線を考えるとリビングやダイニングを通らないと洗面所や浴場に行けず不便です。
又、この間取りは家族以外の者が洗面所で手を洗う場合などにキッチン内を見られてしまうと言う事で後悔される間取りでもあります。

右図はリビング階段を優先したばかりに便所がキッチンに隣接してしまっている間取りです。(実際に建売販売されていた例です。)
階段は1階から2階に上がった所が図示されています。
さすがに便所の扉をキッチンに向けてはいませんが、空間は一体の為、お客様は元よりご家族も使い難い気がします。
臭いや音を気にされる方にはお勧めできませんね。
この建売住宅では1階に洗面所や浴場、もう一ケ所便所が設けられていましたので、お客様は1階の便所を使用されるのでしょうか…。
又、3階の各居室から便所に行く場合は、図では見えませんがリビングやダイニングを通り、キッチンに入ってこの便所を使用することになります。

動線が悪くなる例としてあげましたが、階段の取り方で間取りは大きく変わってきますので注意しましょう。

廊下等を無くしLDKを少しでも大きく見せるのは『畳数』の為でもあります。
住宅情報誌などを見ていると、『LDK○畳』と記載されていますが、あの数字を少しでも多く表記できるように廊下を無くしてリビング階段にしている場合があります。
大きい畳数は売り文句であり、部屋内通路やデッドスペースになろうとも売り手側は気にしていません。
廊下部分を無くすリビング階段が全て悪いとは言いませんが、部屋内のどこに何の家具を置いて、どういった動線になるのかを想像し、検討する事をお勧めします。
注文住宅であれば住まい手の価値観に合わせて計画することが出来ます。
例えリビング階段になるとしても、前もって一緒に検討し、住まい手の生活スタイルに合った家づくりが出来れば納得していただけると思います。
計画でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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