耐火建築物は木造住宅の進化系になる?

建物を建てる場合、主に木造、RC造、鉄骨造という選択肢があります。
住宅では木造が一般的ですが、これまで耐火建築物としてまで建てられる事はほとんどありませんでした。
前回の記事で木造三階建て店舗付住宅の耐火建築物に携わったとお話ししましたが、建てる場合のメリットやデメリットをまとめておきたいと思います。

木造三階建て住宅を耐火建築物にする

建物を建てる場合、その用途地域によって建ぺい率や容積率が変わる様に火災に対する規則や制限も変わってきます。

【制限の緩い順から】
法22条区域 < 準防火地域 < 防火地域
となっています。

一番火災に対して厳しい防火地域は建物の密集地や幹線道路沿いに設定されているので、昔からある建物を除いて耐火建築物になっているRC造や鉄骨造のビルやマンションになっています。

防火地域で耐火建築物にしなければならないのは、延床面積が100㎡以上、又は3階建て以上の住宅になります。
注意)法改正の為、必ずしも耐火建築物とは限らない。

 

防火地域の種類と建築物の規模によって下記のように規制も変わります。
【規制の緩い順から】
防火構造の建築物 < 準耐火建築物 < 耐火建築物
となっています。

実は、平成12年に建設省の告示により『木造耐火構造の構造方法』が定められるまでは木造で耐火建築物を建てることは出来ませんでした。
現在ではこれを基に防火地域や準防火地域でも木造建築物が建て易くなるように少しずつ法改正が進んでいます。
しかしながら、実際には防火地域は街中や大通りに指定されていることがほとんどで、高層建築が認められている地域では低・中層の木造住宅が耐火建築物として建てられることはほとんどありませんでした。
(※耐火性能・耐震性能など様々な技術的問題もあったからです。)

耐火建築物にするデメリット

今回は事例である木造三階建て住宅を耐火建築物にすることのデメリットをいくつかあげてみます。

  • 木造住宅を耐火建築物にする為に通常より建材が必要になる。
  • 建材が必要になれば施工する手間が掛かる。
  • 建材や手間が増えると工期が長くなり施工費用も増える。
  • 建材を多く使うと建物が重くなり耐震性を確保するための基礎強度が必要になる。
  • 耐火構造の設計・施工が難しい。

木造住宅を耐火建築物にしようとすると、一般的な住宅と比べて手間だけでも約4倍ほど掛かることになります。
施工業者は工期が長引いたり手間を掛ける事を嫌うので、準耐火建築物以上となるのなら木造より鉄骨造にしたいと考えるようです。
(※鉄骨造が悪い訳ではありません)

耐火建築物にするメリット

では耐火建築物にするメリットが無いのかと言うとそんな事はありません。
今回、木造三階建て住宅の耐火建築物に携わってみて良い所も実感しています。

  • 建材が増える分、建物が頑丈になる。とりわけ、壁・床・天井が厚くなり、しっかり感を実感できます。
  • デメリットにも書きましたが、建物が重くなった分、基礎がしっかりしています。
  • 耐火建築物でありながらRC造に比べてかなり安価です。
  • 木造なので将来のリフォームやメンテナンスも比較的簡単。
  • 木造なので環境的にも良く、将来の解体時にもRC造よりも経済的です。
  • 耐火建築物は火災保険料も安くなります。

基本的に木造を耐火建築物にしようとすると、壁材や床材、天井材を厚くしなければならないのですが、そのおかげで室内は比較的防音性・遮音性に優れ、真夏でも断熱性や省エネ効果があると感じました。

【例】耐火建築物にするとどう違うのか?

木造壁耐火構造

上の画像は外壁(告示仕様)の参考図です。
比較の為、外部の通気層と外装材は同じ厚みにしています。

左側は【一般的な木造の通気工法】、右側は【木造・耐火構造の通気工法】となっています。

木造の耐火構造は手間と費用が掛かると言いましたが、□で囲んだ下地材(二重張り)の厚みの分だけ壁が厚くなっているのが見て取れます。

これにより耐火構造の方はRC造と変わらない壁厚になり、一般的な工法より防音性や遮音性、断熱性にも優れています。
(※断熱性能は選択する断熱材にもよりますし、屋根などについても一緒に検討する必要があります。)

デメリットのところで設計・施工が難しいと書きましたが、耐火構造では上の図のように建物内部の柱や梁なども二重張りが基本(告示仕様)になりますので、注文住宅の設計経験が無い者や施工仕様が決まっている施工会社等では対応できないと思われます。注意してください。

近年、木造が推奨される訳

最近、木造の中・大規模建築物が話題になっている理由にも関係するのですが、実は今『簡単に潰せないRC造』が問題になっています。

RC造の躯体は木造に比べて耐用年数は長くても、住宅設備まで長く使える訳ではありません。当然、古くなれば快適に住んでいられることもないのでリフォームが必要となってきます。

住宅設備を入れ替える程度の簡易なリフォームの範疇であれば問題ありませんが、間取り等が生活スタイルに合わなくなり仮に建替えたいと思っても、木造と比べ解体費が非常に高い為、住まい手や受け継いだ方が簡単に取り壊せなくなっているのです。
もちろん、自宅として使った後に改装して賃貸物件にされることもあるのですが、いずれ解体する時は訪れます。

これまでは耐用年数が長い事はメリットでもありましたが、鉄筋コンクリート造(RC造)という性質上、簡単に建替えが出来ないという事は大きなデメリットにもなっているのです。
SDGsの観点から木造が推奨されているのもこの為です。

木造住宅の新たな付加価値になる

木造住宅を耐火建築物にする為には施工に手間が掛かり工期や費用がデメリットの一つとなると書きましたが、メリットは多く、付加価値になるとも言えます。

今後、一定の耐火性能を有し、かつ省エネルギー性に優れた家づくりをすることで規制緩和の対象になった木造住宅は、一般的な工法の木造住宅より優遇され資産価値も上がると思われます。

これまでは法律的に必要性が無ければ木造住宅を準耐火建築物や耐火建築物にする事はありませんでした。
(準)耐火建築物と聞くと火災に対する意味合いが強く感じられますが、断熱性・省エネルギー性・持続性(メンテナンス性など)を考えると、これからの木造住宅ではきっとスタンダードになっていく事でしょう。

木造住宅の(準)耐火建築物は住まい手の価値観がデメリットを上回るのでしたらお勧めできると思います。
設計・施工は通常の家を建てるのとは違い複雑で難しいものになりますが、HAS建築研究所では経験を活かした注文住宅が可能です。
ご興味がありましたらお気軽にご相談ください。

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