どんな建物にも設計図はありますが、設計図書の内容については建物の規模や構造、建築士の意図によって変わってきます。
設計図にも色々ありますが、皆さんが目にすることが多いのはやっぱり住宅の情報誌や不動産広告などに載っている平面図ではないでしょうか。
まずこの図面がなければ間取りや住まい方をイメージすることは出来ませんね。
住まいづくりの設計
個人的に間取りを計画する時に気を付けているのが“モジュール”です。
“モジュール”とは(構造)柱の芯々間の寸法で、一般的な住宅ではこの寸法が910mmを基本として設計されていることが多いです。
(日本の家屋は尺貫法が基準になっていることがほとんどのため。)
プレハブ住宅でよく聞く“メーターモジュール”とはこの寸法が1000mm(1m)を意味しています。
一般的に敷地に合わせて升目上のモジュールをイメージし、間取りの計画を進めていくことになります。
(910mm角の升目が2つで約1畳、升目が4つの四角形で約1坪としてイメージ出来ます。)
モジュールを910mmにすることが悪いわけではありませんが、日本家屋における近代日本人の体格や住まい方などを考えると使い勝手の良い寸法とは言えません。
動線が狭いと家も狭く感じます。
例えば建物全体のモジュールを910mmにすれば廊下や階段幅が有効で約750mm(75cm)となり、部屋への出入口“扉”の幅もそれが基準となります。
75cm幅の廊下では、ちょっと体格の良い男性であれば壁に肩や持っている手荷物が擦ってしまうぐらいです。
大きく進化した現在の冷蔵庫や洗濯機、TVなどが搬入し難いということもあります。
また、高齢化社会を迎え、自宅介護が推奨されているのにもかかわらず、廊下や出入口の幅が狭いために介助出来ないということにもなっています。
敷地の条件や法律の関係で建物が建てられる面積が大きくなくても、私は出来る限り動線になる部分はモジュールを工夫して“長く使える住まい”にしたいと考えています。
必要なところに適切なモジュールを
建物全体のモジュールを1000mm(1m)に出来ればゆとりのある設計も可能ですが、その分建築面積や延床面積が増えてしまって建築費が上がってしまったり、希望する間取りにしたら法定面積をオーバーしてしまうこともあります。
そこで廊下や階段、出入口のところなど必要なところだけメーターモジュール(又は910mm以上で取れるだけ)にして各階の工夫をしていきます。
画像はHAS建築研究所の住まいづくりの実例ですが、この緑色の廊下や出入口箇所などが部分的にメーターモジュールになっています。
※この廊下幅でおよそ825mm(82.5cm)となります。
(柱は120mm角を使用)
長く住める家にして欲しいから
どうしても住みたい地域を優先させると建売住宅を検討することもあるでしょう。
最近の建売住宅は“自由設計”が可能なところも多く、仮プランで販売し、プランが決まってから契約を進めていく場合もあります。
プランの打ち合わせ時に“モジュール”について話しても工夫してくれなかったり、理由もなく「無理です。出来ません。」などと言う業者であれば購入を控えた方がいいと思います。
あなたの為の家づくりをしてはくれません。
建売住宅は土地より建物の部分で利益を取っていますので、大工さんにややこしい指示をする必要がないように、“簡単に短期間で建てて売る”を理想としています。
何か希望しても「その分安いのだから…。」と、言ってくる業者ならさらに問題です。
人生に幾度とない“我家”を手に入れる時に、安くても気に入らないではもったいないと思いませんか?
モジュールの工夫だけが良い家を建てるための条件ではありませんが、知っておけば平面図を見て最初に検討できるところでもあります。
建売住宅を購入される場合だけでなく、新築や建替えを検討されている方は参考にしてください。